皆様こんにちは。KDDI技術戦略部木村と申します。KDDIはTeam HAKUTO(※1、以下HAKUTO)、CHIRIMEN Open Hardware コミュニティ(※2、以下CHIIRIMEN OH)と共に、2016年8月6,7日に開催されたMaker Faire Tokyo 2016に出展しました。今回は会場の様子と、「Web×宇宙×Make」をテーマとしたHAKUTO、CHIRIMEN OH、KDDIの合同出展、また、それに関する裏話をご紹介したいと思います。
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1.Maker Faire Tokyoとは
Maker Faire Tokyo(株式会社オライリー・ジャパン主催)とは、自分達が熱い思いを込めて作ってきたモノを見せ合い、交流を図り楽しむという、まさにモノ作り好きのためにあるイベントです。一部の方には「コミケの理工系版」というと、わかりやすいかもしれません。多くのブースでは、実際に作品に触れたり、体感したり、作ったりすることができるため、小さい子供たちも楽しめるイベントになっています。私は今年初めて参加しましたが、小物からロボットまでさまざまなモノが溢れており、モノの完成度に関係なく、暖かく受け入れられる空気を感じることができました。
2.HAKUTO、CHIRIMEN OH、KDDIの合同ブース
親子で協力して、ルナサーフェス(仮)を攻略!
今回、KDDIは、HAKUTO、CHIRIMEN OHと合同でブースを出展しました。その内容をご紹介します。なお、KDDIは自社製品の展示はせず、CHIRIMEN OH、HAKUTO両コミュニティの展示サポート、および、ブースでのステージ企画を行いました。
CHIRIMEN OHのスペースでは、CHIRIMENを使った2つの展示が行われていました。
1つ目は、プロジェクタとアクチュエータを使った月面探査体感型ゲーム、「ルナサーフェス(仮称)」。このゲームは、月面を模した木板をコントローラからの操作で傾けることで、その上に載った紙コップ(月面探査機)を動かします。上部に接続されたプロジェクタからウェブアプリを投影し、その画面内にある丸いマークを紙コップが通過するとポイント稼ぐことができるものです。小さな子供たちに大人気のゲームでした。CHIRIMENは物理デバイスとウェブアプリを直結できるボードの為、ウェブアプリのゲームを体感型のゲームに移行するのには、最適なシングルボードコンピュータであることを実感しました。
2つ目は、専門学校東京テクニカルカレッジの学生が展示したCHIRIMENを使った席の空き状況を表示するシステム。クッションにセンサが入っており、CHIRIMENと接続することで、席の空き状況を画面に表示することが可能となっています。将来的には、レストランなどに入れたいとのことです。学校の講義の中で行い、「製作期間は1ヶ月ほどだけど、回路・ウェブプログラミングの知識が元々ある人なら、半日程度で作れるかもしれない」と話してくれました。純粋な学生の意見の為、参考になります(笑)。CHIRIMENの扱いやすさ、品質の高さが窺い知れました。また、本イベントにあわせ、このCHIRIMENボードの販売が開始されましたが、大変好評だったと聞いています。来年のMaker Faire Tokyoでは、本ブース以外でもCHIRIMENを使ったモノ作りが見られるかもしれません。
au×HAKUTO MOON CHALLENGE
HAKUTOからは、同Teamが参加するGoogle LUNAR XPRIZEミッションの説明を頂きました。ミッションは3つ:
1.月面に純民間開発ロボット探査機を着陸させること
2.着陸地点から500m以上移動すること
3.高解像度の動画や静止画データを地球に送信すること
今回のミッションは上記ですが、最終的な目的は月での資源獲得とのことです。月での新たな資源獲得もビジネスに繋がりますが、HAKUTOが一番見つけたいものは「水」。理由は、水を分解することで月でのエネルギー生成が行え、人工衛星や宇宙ステーションに補給ができるようになるためとのことです。地球から燃料を持っていく必要が減り、宇宙開発の費用が大幅に削減され、開発が促進されるのではないかとのこと。なんとも夢のある話だと思います。今後もHAKUTOの動向に注目です。
ローバーの試作機
また、HAKUTOブースでは、月を探索するローバーの試作機を、実際にコンソールで動かすことができました。これも上述のGoogle Lunar XPRIZEのミッションを模擬したものの1つです。車輪よりも大きい石を乗り越える姿は、小型ながらも非常に頼もしく見えました。
CHIRIMENを使ったミニローバー操縦も
さらに、CHIRIMEN経由で操作できるミニローバーを試作し展示しました。CHIRIMENに接続されたサーボモータで車輪を駆動できるようになっており、Web画面上から操作できる形となっておりました。
KDDIステージ企画
KDDIブースでは、「Web x 宇宙 x Make」のテーマの下、本イベント参加者が自由にディスカッションできる場として、以下の企画を開催しました。どのイベントも多くのお客様にご参加いただきました。
・「坂井直樹氏プレゼンツ パネルトーク『メーカーズから宇宙まで』」(パネラー:久下 玄氏(tsug.LLC)、西村真里子氏(日本テレビSENSORS/HEART CATCH)、関 智氏(刺激スイッチ研究所)、坂井直樹氏(ウォーターデザイン))
・「au×HAKUTO MOON CHALLENGE コラボ企画 私だけのプラネタリウム作り!」
・「CHIRIMENでできるHAKUTOのミッションをガチで考える」
・CHIRIMEN x JS(JavaScript) Board勉強会のディスカッションイベント
3.裏話
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今回私は、CHIRIMEN OHの活動現場の1つであるMozilla Factoryにお邪魔し、モノ作りのお手伝いをさせて頂きました。金属部品にドリルで穴を開け、回路を設計し半田付けを行い、コーディングまで行う姿、つまり、ハードとソフトの融合作業にはとても驚かされました。特に、前述の「ルナサーフェス(仮)」と「CHIRIMENを使ったミニローバー」はHAKUTOのメンバーとCHIRIMEN OHのメンバーが互いに協力し、イベントの約2か月前にゼロの状態からスタートして、各メンバー時間がない中をやりくりして作り上げたものとのことです。この2つのうち「ルナサーフェス(仮)」について開発途中の話をもう少しすると、当初、そのコントローラには、ラジコンのコントローラを利用する予定でした。量販店で購入したラジコンをハックし、回路をCHIRIMENに接続、実際に動かすところまでを行いました。しかし、操作性がイマイチであることがわかり、コントローラを急遽テンキーに変更しました。その結果、ゲームバランスが整い、白熱するゲームとなりました。この過程が、まさにアジャイル開発と言えるのではないでしょうか。プロトタイプを開発し、随時改善するというサイクルを繰り返したことで、質の高いモノが生まれたのだと思います。その中で、特に印象的だったのは、時間に余裕がなく厳しい状況にも関わらず、全員がどこか楽しそうに見えたことでした。モノ作りの本質は楽しむことであり、その過程で技術力や能力が身につき、成果に繋がるのだなということを実感できたイベントでした。
Maker Faire Tokyo2016終了時のHAKUTO×CHIRIMEN OH×KDDIメンバーの記念撮影
KDDIは、日本のメーカーズムーブメントの教育・産業界への浸透・発展に貢献したいと考えておりますが、今回、本イベントに参加した子供達の喜び、多くの参加者の熱意を見られたことは、うれしい限りです。今後も更に力を入れて活動していきたいと考えております。また、KDDIは、CHIRIMENを始めとしたWeb of Thingsの取り組みにも、さらに力を入れ、盛り上げ、普及させていきたいと考えております。
(※1)日本で初めて民間による宇宙開発を目指している団体であり、Googleがスポンサーの月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に日本から唯一参戦している
(※2)センサやアクチュエータなどの物理デバイスをWeb技術だけで制御することが可能なシングルボードコンピュータとそのソフトウェアからなる開発環境CHIRIMENを開発するオープンソースコミュニティ。